食・見つめて:伊賀・熊野の取り組み/2 日本のコメを守る会の農業体験 /三重

1月4日11時1分配信 毎日新聞

 ◇自給率向上へ啓発
 「よいしょ、よいしょ」
 周囲を里山や田畑に囲まれた名張市安部田で先月21日、NPO法人・日本のコメを守る会主催の農業体験が開かれた。会員や一般市民、60人が参加。子どもたちはNPOの事務担当、浜本孝江さん(64)らの手ほどきを受けながら餅つきを体験し、たき火で遊んだ。
 NPOは94年3月、地元や関西の消費者、有識者により発足。00年に法人化した。米の輸入自由化に伴い、防カビ剤などに汚染された米が国内に入り、市場主義導入で日本農業は崩壊しかねない……。そんな危機感が契機となった。
 「自分たちの食料は自分たちの手で」。これが会の目標だ。そのためには、生産者と消費者の連携が不可欠。その実践として、伊賀地域の生産者が有機無農薬栽培した米を、消費者が直接買い取る活動を始めた。
 さらに、田植えや稲刈りは消費者がし、水やり、草刈りなどの日常管理は生産者が請け負う農業体験も実施。食や健康への関心の高まりもあって、参加者は年々増えている。米に続き、野菜づくりを体験できる「畑のオーナー制」も近く始める予定だ。
 会として重視しているのが子どもたちへの普及、啓発。「小さい時に農業や食の知識を身に着けたら、一生忘れない」。代表代理の伊藤伝一さん(78)=同市安部田=は強調する。市内の小学校に出向き、紙マルチで雑草の繁殖を防ぐ農法も紹介しており、市民対象の農業体験もその一環だ。
 体験は年間4回程度開催しており、今年度は田植えや稲刈り、収穫祭(芋煮会)などを実施した。市の市民公益活動実践事業に採用されており、毎回家族連れでにぎわう。
 餅つきで使った米や小豆は無農薬栽培。祖父と参加した市立つつじが丘小6年の松嵜芽依さん(12)は「とてもおいしい」とつきたてをほおばった。
 「農地の耕作放棄が進み、日本の農業は生産力が落ちている。また、食品偽装にみられるように、消費者の食への不安が高まっており、我々の存在意義は一層高まるはずだ」。伊藤さんはこう力説する。【渕脇直樹】
〔伊賀版〕

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