<農地漂流>荒れたまま市が売却 鹿島臨海工業地帯

1月10日2時34分配信 毎日新聞

 茨城県の鹿島臨海工業地帯に農地を持っていた人たちへの代替農地などとして開発組合が買収した土地を、県が鹿嶋市などに雑種地として売却し、同市が一般向けに販売している。多くは、雑草が生い茂ったり、建設残土が不法投棄されるなどしており、周辺で耕作する農家は悪影響を懸念している。農地をつぶし、悪条件のまま販売する行政の手法に批判が出ている。

 工業地帯の造成事業は1960年代に始まり、開発区域を去る住民の住宅用地や代替農地として、茨城県が出資した開発組合が大量の土地を買収した。多くは農地だった。開発の終了で組合は84年に解散。離農などで提供されなかった代替農地などは県が引き継いだ。

 県によると、そのうち170ヘクタールを86年、地元旧3町(現鹿嶋市、神栖市)に売却した。農地の多くは雑種地に転用(地目変更)して引き渡していた。変更の理由は「農地のままでは自治体が所有できないため」だった。

 76ヘクタールを購入した鹿嶋市は、7年前から販売。07年度売り出し分は20区画計23・6ヘクタールで、うち12区画12・6ヘクタールが「元農地」だった。

 毎日新聞が12区画の現況を調べたところ、田野辺地区の16アールの区画(畑)は、高さ2メートル近いササが密生していた。近くにある22アールの区画(畑)には、建設残土が高さ5メートルほど積み上げられていた。

 そばに住む農家の男性は、この2区画を市が所有し、売り出していることを知らなかった。「残土は2年ほど前に積まれた。市に指導を求めたが、動かなかった」と話し、耕作地に汚水などが流れ込まないか心配する。

 少し離れた7アールの区画(田)は地図上は棚田だが、雑木林になっていた。現場につながる2本の農道は草木に覆われ、徒歩で現場に近づけなかった。悪条件の土地は、廃棄物の捨て場や資材置き場などに使われることが多い。

 鹿嶋市企画課は「市が持っていても利用できないので、有効利用してもらおうと売っている。現地は職員が確認し、これまでにトラブルはない」と説明する。これに対し、農業を営む浜田弘・鹿嶋市民オンブズマン代表幹事は「もとが農地なら、耕作地に戻す道を探るべきだ。雑種地では産廃業者に狙われる。現状を放置したままの販売はずさんで、悪質な不動産屋と大差ない」と批判している。【井上英介、田村彰子】

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