牛放牧で耕作放棄地除草…宇佐・余谷地区の棚田

宇佐市院内町の山間地・余谷(あまりたに)地区で、肉用牛を放牧し、荒れ放題になった棚田の草を食べさせる集落放牧事業が始まった。除草作業の手間を減らし、牛の餌代を節約できるうえ、景観保全にも役立つなどメリットは多い。県は「耕作放棄地解消に有効であることを実証し、県内各地に広げたい」と話している。(柿本高志)

 余谷地区には、日本棚田百選に認定された場所があり、川には天然記念物のオオサンショウウオが生息している。農家35戸は農事組合法人「あまりたに」(小田保彦会長)を組織し、農作業の効率化を進めているが、過疎と高齢化で耕作を放棄する棚田が増加しており、同法人が草刈りなどをしてきた。

 しかし数年前から、作業が追いつかなくなり、小田会長らは県北部振興局(宇佐市)に相談。県内では雑木林や荒廃した果樹園、水田などに放牧する「おおいた型放牧」に取り組んでいることを踏まえ、農水省の水田利活用自給力向上事業を活用。地区内の牧場から繁殖用の雌牛3頭を借り、2ヘクタールの棚田に放した。

 放牧は当初、5月に始める予定だったが、宮崎県で家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」が発生した影響で、牛の移動を自粛したため、7月22日にずれ込んだ。

 小田会長は「まだ放牧期間は短いが、牛が大量の草を食べ、雑草に覆い隠されていた棚田の形が分かるようになってきた。牛が食べないカヤなどを私たちが刈ればいいので、助かる」と喜ぶ。

 畜産農家が本格的に放牧に取り組めば、今より5割ほど多い牛を飼育できる可能性もあるという。

 北部振興局生産流通部は「草がまだ柔らかい春なら、もっと効果が大きい。放棄地を整備すれば、イノシシやシカが田畑に近づくのを防止することにもつながるはず」と期待している。

(2010年8月19日 読売新聞)

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