無農薬無化学肥料栽培:危機転じ、愛の「家族米」--大崎の小関さん /宮城

◇アイガモがキツネに襲われ全滅、総出で草取り
 アイガモに除草させる方法で米の無農薬無化学肥料栽培に取り組む大崎市三本木の専業農家、小関俊夫さん(61)は6月、大きな困難に見舞われた。約2ヘクタールのササニシキの田に放して間もないアイガモ200羽がキツネに襲われ全滅したのだ。目前に迫った除草シーズン。家族総出で草取りを続け危機を乗り切った。今、穂波がそよぐ田を見やりながら小関さんは「めげない農の心をつかんだような気がする」と話す。

 千葉県の家きん業者から仕入れたアイガモ。6月3日朝、田の一角にしつらえた仮屋根付き寝床の周囲に散乱する死骸(しがい)を見つけた。抜け落ちていた毛などから複数のノギツネの仕業と分かった。

 除草は、質量ともに良い米作りに欠かせない作業。無農薬をまっとうするためには除草剤は使えない。知人から2度、乗用除草機を借りることができたが、後から後から雑草は出てくる。

 「手取りで頑張るしかない」。こう決めた小関さんに妻の陽子さん(58)はもとより3人の娘や高校1年生の男孫が文句も言わずに仕事休みや部活動の合間を縫って草取りをしてくれた。照る日も雨の日も腰をかがめてヒエやコナギなどの草を抜き取る作業が1カ月続いた。そのかいあって実りは10アール当たり8俵弱(1俵60キロ)と例年並みの見込みだ。

 小関さんは、アイガモ農法を8年前に導入したが、無農薬無化学肥料栽培歴はさらに古く今年で28年目。かつての手取り除草の経験が今回の作業に生かされた。小関さんは「今年は『アイガモ米』ではないけれど、家族のきずなと思いがしみこんだ『家族米』です」と話す。稲刈りは10日ごろだ。

 連絡は小関さん(0229・52・3363)。【小原博人】

育てて実感技術と苦労

中学校で作物などの生物の育成を学ぶ授業が必修化される。

 校庭の隅にずらりと並んだ土入りの米袋。畑代わりのこの袋に、3年生約30人がそれぞれダイコンやカブの種をまいていた。9月15日、大阪府大東市立諸福(もろふく)中学校で行われた技術・家庭科「作物の栽培」の授業だ。

 授業では、種をまいてから収穫までを学ぶ。肥料を与えた作物と、与えない作物とを比較して育て、人が手を加えることで作物が良く育つことを学んだりもする。この日、生徒らは種をまいた後、作業の説明や感想をプリントに書き込んだ。

 木村直哉君(15)は、1学期にはトウモロコシ作りに取り組んだ。「作物がどうやって育つか知らなかった。自分で作って食べたものはおいしい」と笑顔で話す。


 「栽培」は、現在は技術・家庭科の選択授業だが、2012年度から施行される新学習指導要領で、「生物育成に関する技術」と名前を変えて必修化されることになっている。選択だと取り組む学校が少ないこと、05年に行われた国の意識調査で、「栽培」に対する生徒の意欲が必修科目に比べて低かったことなどが背景にある。

 「今の子どもたちは生まれた時から野菜は買ってくるという発想で、育成過程がブラックボックス化している。体験を通して、そこに込められた技術や苦労を知ることが必要」と文部科学省の担当者は話す。

 作物は、農薬や肥料、バイオテクノロジーなどの技術を使い、計画的に育てられる。そうした技術を子どもたちが知り、興味を持てば、新たな担い手育成につながる。一方で、技術には環境破壊などの負の側面もあり、生産者、消費者とも理解を深めることは必須と言える。


 無農薬は1個300円、通常栽培は1個30円――。ジャガイモの栽培を通じ、技術について考える授業を行ったのは、北海道立教育研究所研究研修主事の大西有さん(43)だ。

 大西さんは、昨年度まで勤めた北海道教育大学付属旭川中学校で、生徒一人一人に通常栽培と無農薬の二通りでジャガイモを育てさせた。無農薬にすると、雑草が生え、休み時間にも草取りが必要で手間暇がかかる。かかった材料費や人件費などを金額に換算したら、通常に比べて無農薬は約10倍の価格になった。

 「本当に安全な作物を栽培するのはかなり大変」「農薬に頼らなくてもたくさん収穫できる技術を開発する必要がある」。生徒たちは野菜が安く手に入るのは、技術のおかげだということを実感したという。

 「農薬も一概に悪いとばかり言えないし、使いすぎてもいけない。『健康』と『経済性』という二律背反の中で、最適な答えを求める考え方を中学校で身に着けることは意義がある」と大西さんは話す。

 育てる技術を使いこなすにも、まずは学ぶことが第一歩だ。(名倉透浩)

 生物育成に関する技術 技術・家庭科の選択「作物の栽培」が名前を変えて必修化される。従来は作物の栽培だったが、対象は魚や動物などの生物一般にまで拡大。そうした生物の育成体験を通じて、基本的な知識や技術の習得、技術を評価し活用する能力を養うことを狙いとする。

(2009年10月1日 読売新聞)

石橋:点検し見直す--宇佐 /大分

日本一の石橋群(75基)を誇る宇佐市院内町で29日、是永修治市長をはじめ商工観光課職員、観光ガイドらが石橋を点検した。年間約6万人(07年度)の観光客があるが、「説明板が古く、判読が困難。雑木などで橋がよく見えず写真が撮れない」などの苦情が多数寄せられたため。

 一行が今回、点検したのは、優雅なたたずまいを見せ「貴婦人」と呼ばれる鳥居橋(県指定有形文化財)や由布岳が望める富士見橋など5基。点検の結果、4橋には音声案内が設置されているが、故障したまま。ほとんどの橋の側壁に、雑草や雑木が生えており、説明板もひび割れていた。

 院内ふるさとガイドの一人・向野茂さん(74)は「橋の細かい破損も見られ、大事に至る前に修復してほしい」と要望。是永市長は「雑木の除去をすぐ指示した。看板の立て替えは補正予算で対処したい。長期的な視野で保存を考えたい」と話した。【大漉実知朗】

延岡城:建設会社の職員ら、石垣の雑草刈り奉仕 /宮崎

9月30日16時1分配信 毎日新聞

 「のべおか天下一(てんがいち)薪能」(10月10日)を前に29日、延岡市内の建設会社の職員ら26人が、延岡城址(し)二の丸広場前の石垣の雑草を刈り取った。
 大瀬建設産業(吉岡宜彦社長)によるボランティア作業。職員は体にロープを結わえ、軽業師のような身のこなしで、高さ約23メートルの石垣に生えた草や雑木を取り除いた。
 1603年、高橋元種が築城。石垣は、野面積(のづらづみ)で、一番下の石を取ると一気に崩れ落ち、別名「千人殺し」とも呼ばれる。97年から始まった薪能では、幽玄な雰囲気を醸す舞台背景となっている。
 作業班長代理の花田昌幸さん(44)は「延岡を代表する歴史的な石垣をお客さんに最高の状態で見てもらえればうれしい」と話した。