会いたい聞きたい:「食べるイ草」で地元貢献を目指す、稲田剛夫さん /熊本

4月12日13時1分配信 毎日新聞

 ◇「特産で八代を元気に」--稲田剛夫さん(66)
 八代地方は今、30センチほどに伸びた特産のイ草畑が広がっている。洋間中心の家が増え、生産農家が苦境にある中、イ草を畳だけでなく「食用」に用途を拡大し、需要の掘り起こしを進めている人がいる。八代市鏡町の有限会社「イナダ」の稲田剛夫社長(66)は、イ草業界のベンチャーでもある。【笠井光俊】
 --イ草を食用に粉末化した商品を開発してから17年目になるそうですね。
 ◆はい、でも「イ草を食べる」という感覚はまだ広がっていません。既成概念を打ち破るのは大変です。ただ、やっぱり八代を元気にするのはイ草です。イ草で栄えた街としての知識や経験を畳以外でも生かすべきです。
 --開発の際にはいろいろな苦労があったと想像します。
 ◆以前から「八代・鏡地域には土産物がない。特に食べ物が」と思っていて、「特産のイ草を食べられないか」と考えたわけです。勉強のため図書館に2年通い、県工業技術センター(熊本市)にイ草の成分を分析してもらいました。
 --無農薬生産にこだわっています。
 ◆食品にする以上、農薬は使えません。当初は生産を農家に頼もうとしましたが難しく、自分で作り始めました。今は5アールの畑で11月ごろに苗を植え、初夏に収穫します。その間はひたすら雑草取りに追われる毎日です。
 --イ草の良さは何ですか。
 ◆食物繊維や栄養素を多く含んでいます。粉末を溶かした液に魚や肉を浸すとくさみが消えるし、お茶に混ぜると渋みが和らぎます。しかも素材の良さは損なわない。合わないのはビールぐらいですね。畳に座ると体が安定するので集中力が増します。子どもたちも畳の部屋で変わりますよ。
 --イ草粉末を使った食品が次々に出てきているとか。
 ◆自社でティーバッグを作っているほか、他の食品加工会社が麺(めん)や飴(あめ)、青汁など数十種類の食品に使ってくれています。最近は同じ鏡町の野村鮮魚店が、粉末を混ぜた卵焼きやてんぷらなどの食材を盛った弁当を売り出しています。
 --イ草農家や流通業者と「いやしの会」というグループを作っているそうですね。
 ◆畳向けに無農薬のイ草を生産しています。結成から10年でようやく農家の希望価格で買い取ってもらえるようになりました。成功だと思います。
 --今の思いを教えてください。
 ◆イ草は素晴らしい素材です。もっとイ草に感謝し、もっと勉強しなければいけません。イ草や畳にはまだまだ可能性があります。昔のような「イ草の街」に戻すことは夢ではありません。
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 ◇プロフィル
 実家はノリ養殖の網や、イ草で畳表を作る時に編み込む糸の販売をしていた。1992年にイ草粉末を商品化。現在は八代市商工会観光部会の副部会長として「心の観光」をキーワードに活動している。

希少植物オグラコウホネを守ろう 勝竜寺川で新入社員ら清掃に汗

4月7日11時29分配信 京都新聞

 京都府の希少野生生物に指定されている植物「オグラコウホネ」が生息する長岡京市の勝竜寺川で6日、近くに工場がある香製造販売会社「松栄堂」(本社・京都市中京区)の新入社員らが、河川の清掃に取り組んだ。
 オグラコウホネはスイレン科の多年草で、6-9月に黄色い小花を咲かせる。勝竜寺川では市民団体「乙訓の自然を守る会」が2003年に植生を確認、保全に取り組む。松栄堂は全社的な環境保護活動の一環で毎年、清掃に協力している。
 この日は新入社員10人が、先輩社員や同会のメンバーらと川に入り、ごみを拾い、オグラコウホネの成長を妨げる雑草や枝を刈り取った。清掃には2月に上流の川に汚水が流出した食品加工工場の関係者も参加した。
 新入社員の小野里恵子さん(22)は「自然とかかわる仕事の責任を再認識した」といい、スイスの実家が農家のセバリー・セリーヌさん(32)は「京都も自然やきれいな川が残っている。大切にしないと」と話した。