8月27日11時59分配信 中日新聞
【岐阜県】瑞浪市が特産化を目指して試験栽培を続けているマコモタケ(イネ科)の収穫作業が、9月から始まる。本年度は中小企業庁所管の「地域資源∞(むげんだい)全国展開プロジェクト」の支援対象に県内では唯一選ばれ、地元の学術界や産業も巻き込んでの商品化計画が本格化し始めた。
同プロジェクトは、地域資源を活用した新事業展開を支援する目的で、2年前に始まった。瑞浪市は昨年12月にマコモタケが県地域産業資源に指定されたことを受けて応募。収穫後1週間で劣化するマコモタケの長期保存と加工技術を開発するため、計900万円の補助金を得た。
長期保存ではマコモタケ独特の食感を残すため、人間の臓器保存への利用も期待される「電磁波冷凍保存」の応用を決めた。食品研究で定評のある中京短期大学(同市)が窓口となり、企業や研究所に開発を依頼している。加工品の開発では、地元の食品業者と連携。既に粉末や缶詰、漬物を試作しているが、「まだまだ商品化には至っていない状態」(市農林課)という。
一方、長野市や三重県などもマコモタケの生産促進に力を入れている。市は「ライバルが多く、一歩抜け出すには商品化が急務」として昨年、市内の大手スーパーの協力で、全国で初めての店頭販売にこぎ着けた。今年も販売するが作付面積は80アールしかなく、農家の協力も不可欠になっている。
市は「コメの10アール当たりの収入は14万円だが、マコモタケは70万円を見込める」と説明するが、農家には懐疑的な声も根強い。「そもそも商品化できるか疑問」といった意見もあるが、「市が農薬を使わない生産を推奨するから、夏場は雑草が生え放題になる」と手間を気にする意見も多い。ある農家は「収穫期は虫に食われて大変」と漏らす。
市はこうした意見の集約のため29日、関係者を集めた第1回会合を開く。瑞浪商工会議所は「本年度中に生鮮以外での商品化、販売ルートの確保に向けて方向性を見いだしたい」と意気込む。瑞浪市が一丸となった農業の振興策は、まだ始まったばかりだ。
(志村彰太)