水仙:あふれるまちへ 球根1万6000個掘り出し--南あわじ市 /兵庫

◇秋に学校などに配布
 南あわじ市を市花「日本水仙」があふれるまちにしようと、同市は市制5周年記念で水仙普及事業に取り組むことになり、市と同市花づくり協会(谷口保会長)は28日、県道阿万バイパス沿いの歩道に植えられている水仙の球根約1万6000個を掘り出した。10月中旬に定植週間を設け、学校や公民館、観光施設に配布して植えてもらう。

 同市北阿万伊賀野の県道阿万バイパスの道路両側の歩道の花壇には、約10年前に延長200メートルにわたって地元住民が水仙の球根を植えている。その後、球根が増えて花が咲きにくくなっており、市花づくり協会の協力を得て余分な球根を掘り出して公共施設や観光施設で育ててもらうことにした。

 この日は、市花づくり協会の役員と市職員約20人が作業にあたった。軽トラック5台分の雑草を取り除き、スコップで約2万個の球根を掘り出した。うち約4000個は花壇に植え直した。残りの約1万6000個を公共施設や観光施設に配布し、花壇やプランターに栽培してもらう。

 谷口会長は「今年は公共施設や観光施設に球根を配布する。他の道路にも球根が植えられているので、来年は市民にも配布して家庭で植えてもらえるよう住民運動として広め、水仙のまちとして売り込んでいきたい」と話している。【登口修】

湿地よみがえれ 那須烏山

那須烏山市月次の同市職員、小峯洋一さん(44)が中心となった「南那須自然観察会」が、2005年から里山の湿地再生活動に取り組んでいる。人の手が加わらなくなると消滅してしまう湿地を、草刈りなどの活動で復活させ、湿地特有の植物や爬虫(はちゅう)類などを呼び戻す。湿地は多様な動植物のすみかとなり、子どもたちの環境学習の場にもなる。小峯さんは「自然の大切さを感じた原点を、未来の子どもたちのためにも守りたい」と話す。

 小峯さんは埼玉県所沢市出身。宇都宮大卒業後の1991年に旧南那須町(現・那須烏山市)職員になり、地域住民らで「南那須自然観察会」を設立して自然保護活動を続けてきた。

 70年代、所沢の里山は映画「となりのトトロ」のモデルにもなった自然豊かな場所で、湿地が広がり、毎日昆虫図鑑を持ち歩き自然に親しんだ。ところが、土地開発の影響などで次第に消滅。「未来に残したい」との願いが原動力となった。

 湿地保全の基準を定めているラムサール条約によると、湿地とは自然、人工の沼沢地、泥炭地で、低潮時の水深が6メートルを超えない海域も含み、周辺に水草や野草など様々な植物帯を持つ。しかし、河川の氾濫(はんらん)が減少した現代では、雑草の除去など手入れをしないと乾燥して自然消滅してしまう。日本有数の湿地、群馬県の尾瀬ヶ原でも近年水位が低下、土壌流出が深刻という。

 小峯さんが取り組むのは人工、天然を問わず水分の確保ができ、多様な生物が生育していた場所。05年7月、同市八ヶ代の山に囲まれた元田んぼの土地約2900平方メートルを200万円で購入した。2年間に月1、2回、一面に背丈以上に伸びた藪を引き抜くなどして除去。その後3年間で地面からしみ出す水分と、池から流れる水を土のうなどで食い止めた。最初はヨシやクズなどが目立った草地だったが、07年頃からヤノネグサやイモリなど、湿地帯特有の動植物が見られるようになった。環境を“操作”する難しさに向き合いながら、活動は実を結びつつある。

 県野鳥の会の遠藤孝一副支部長は、小峯さんの環境再生活動を「今後各地で行われる類似の活動のよい見本になる」と評価する。

 活動には今後、子どもたちも加えていく考え。「自分が出来るのはせいぜいあと20、30年。その後も、意志を引き継いでもらいたい」と、県内全域で活動が広がることを願っている。

(2010年7月27日 読売新聞)

川の通信簿「万力公園」は4つ星 山梨

 国土交通省が河川公園設置者や一般市民と3年ごとに河川空間の利用のしやすさを調査する平成21年度版「川の通信簿」がまとまった。全国108水系、665カ所で調査した。富士川水系では山梨、静岡両県計6カ所が調査対象。山梨県分では5段階評価で前回調査(18年度)は3つ星だった山梨市の「万力公園」は「木陰が多く、よく整備されている」が「ごみや犬の糞(ふん)が気になる」として、4つ星評価にとどまった。

 甲斐市の「信玄堤公園」は1ランクダウンの3つ星。「歴史、文化を感じることができる」が「ごみ、雑草が多い」とマイナス評価が影響。今回初めて調査対象となった笛吹市鵜飼橋右岸の「石和ふれあいゾーン」はよく整備され、特に「トイレがきれい」というのが評価を高め、4つ星を獲得した。

古代米づくり体験講座:親子連れら、雑草取り体験--盛岡 /岩手

昔ながらの手作業で古代米を栽培する「古代米づくり体験講座」が11日、盛岡市上鹿妻の志波城古代公園で開かれた。全5回のうち3回目の今回、親子連れら36人が稲の育ち具合を観察し、水田の雑草も取った。

 5月23日の前回講座では、古代米の一種で紫黒米の「おくのむらさき」を公園内の水田約300平方メートルに植えた。約1カ月半がたち、水田には雑草が生えてきたため、参加者は裸足や長靴で水田に入り、手作業で雑草を抜き取った。08年から毎年受講している盛岡市山王町、小学4年、山田優羽さん(10)は「去年より雑草がいっぱいでびっくりした。すぽっと抜けて楽しかった」と笑顔で話した。

 9、10月に稲刈りと脱穀を体験し、収穫した古代米は参加者に配布するほか、同公園のお土産として販売する。【安藤いく子】

躍動自生ハンゲショウ 四万十市

初夏に葉が白くなるハンゲショウが、四万十市で見頃を迎えた。梅雨明けまで楽しめそう。

 ドクダミ科の多年草で、夏至から11日目の「半夏生(はんげしょう)」(7月2日)の前後に葉が白くなることに由来する。白い葉をおしろいに例えて「半化粧」ともいう。湿地を好むが、開発などにより自生地が減ってきている。

 四万十川に近い同市不破の水田沿いに残る群生地では、今年も長さ7メートル、幅2メートルにわたって色づいた。毎年、所有者が雑草を刈るなどの世話をしており、住民らは「株が少しずつ広がっているようだ」と話す。白い葉は、花がしおれると元の緑に戻るという。

(2010年7月6日 読売新聞)

いのちの条約:COP10・NAGOYA 生物多様性を守れ/6 農作物

◇生産効率優先で在来品種が衰退
 生物多様性を守る対象は野生生物だけではない。農作物や魚介類、微生物など多岐にわたる。このうち、農業分野では生産効率の高い農作物が残り、それ以外の品種は消えゆく運命にありがちだ。遺伝子の多様性損失に当たる種の画一化によって、災害や感染症の発生時に食料不足に陥りかねない。だが、種苗法やカルタヘナ法は、農作物の多様性を守るには不十分だ。【関東晋慈】

 今年2月のチリ大地震は、農作物の多様性が失われていることを気づかせる出来事となった。日本人が食べる野菜の種子の9割は適した気候などを求めて海外で育てられている。地震の影響でネギやニンジンなどの輸送が滞った。トキタ種苗(さいたま市)の本沢安治専務は「5月近くまで輸送のめどが立たなかった。結果的に影響は小さくてすんだが、農家の人たちはずいぶん心配した」と話す。

 戦後、味や形、収量が安定するよう種苗会社が開発した1代限りの交配種(F1)が普及。新品種を登録し、開発者の知的財産権を保護する種苗法は、98年の改正に伴い種子開発への企業の参入を奨励し、F1は市場を席巻した。各地で長く栽培、採種されてきた在来品種は減少した。

 また、73年に開発された遺伝子組み換え技術も在来品種の保全に危機感を与えた。遺伝子組み換え生物の取り扱いを規定したカルタへナ法は、遺伝子組み換え生物が雑草など野生生物と交雑するのを防ぐことを目的に掲げているものの、農作物への影響までは考慮していない。

 各農家に自家採種の習慣が失われると、採種技術も消滅する。各国に「ジーンバンク」と呼ばれる種子の保存施設が整備。日本にも独立行政法人・農業生物資源研究所(茨城県つくば市)が運営するジーンバンクがある。しかし、研究用は無償提供だが、農家には有償で使い勝手が悪い。

 世界銀行などが出資する国際機関「国際生物多様性センター」(本部ローマ)のクウェシ・アタ・クラ次長は「本来ならば、農作物の種子の多様性は、各農家がそれぞれの地域に適した品種を育て続けることで維持される。しかし、現在の各国の政策は企業が開発した技術を保護し、農家の伝統的な作業や多様性保全への配慮が欠けている」と指摘する。

 農林水産省は「法律で在来種の保全は盛り込まれていないが、農林水産省生物多様性戦略(07年策定)に基づいて、種子の保存に努めている」と話す。

  ◇   ◇

 約5000品種の野菜や豆類などの種子を保管する財団法人・広島県農林振興センター農業ジーンバンク(東広島市)。一般にも種子を無料で貸し出す全国唯一の公的研究機関で、多様な品種が消滅することに危機感を募らせて、広島県が89年に設立した。技術参与の船越建明さん(73)は「ジーンバンクは縁の下の力持ちで、何か事が起きれば威力を発揮する。しかし、保管に意味があるのではなく、活用することが前提だ。遺伝資源としての種子は骨董品(こっとう )ではない」と話す。

 安芸高田市の農家、森末盛男さん(69)は2年前、農業ジーンバンクから県特産の「青大(あおだい)キュウリ」の種子を借りて栽培を始めた。過疎化に危機を感じ、「何か活性化策はないか」と考えていたところ、船越さんから青大キュウリの栽培を提案された。キュウリは重さが約1キロにもなり、特有の青臭さがなく、ほのかな甘みがある。森末さんは「在来種は独特の栽培、採種技術が必要だが、それを楽しんでいる。あと2年やれば利益も出て、他の農家も参加してくれるようになるはず」と実感する。

 西川芳昭・名古屋大教授(開発行政学)は「地元で収集・保存している種子を農家に無償提供し、その地域開発の資源として活用しているのは、国際的にも参考になる取り組みだ。海外から品質がいい種子を取り入れることと多様性を守ることはバランスが難しいが、農家が日ごろから行ってきた取り組みを支援する法制度が必要だ」と提言する。

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 ■ことば

 ◇種苗法
 78年制定。食料の安定供給や豊かな生活を得ることを目的に、農作物や花といった植物の新品種を登録し、開発者の知的財産権を保護することを規定している。この権利を侵害すると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金が科される。98年に国際種苗法条約改正を受けて改正され、育成者の権利を明確にした。

 ◇カルタヘナ法
 生物多様性条約に基づき、遺伝子組み換え作物などを規制する国際協定「カルタヘナ議定書」の国内法。03年制定。違反した場合、最も重いもので、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科される。

苗植え:地域の道路を花いっぱいに 飯塚・二瀬中生徒ら植える /福岡

飯塚市立二瀬中学校のフェンス脇の道ばたに30日、地域住民と1年生約150人が花の苗を植えた。元々は雑草が生い茂っていた場所で、地元の市花いっぱい推進協議会のメンバーらがスコップで耕し整備した。

 30日も地元住民ら約10人が学校を訪れ、生徒と一緒に作業した。「花を見て生徒たちの心が豊かになれば」と庄籠(しょうごもり)雅子さん(74)。

 用意された苗は約360本。生徒たちはシャベルで土をやわらかくし、ポットから取り出した苗を丁寧に植えていた。岡田聖奈さん(13)と勝野瑞紀さん(13)は「元気に育つようにと植えた。普段はあまり通らない場所だけれど様子を見に来たい」と話していた。

〔筑豊版〕

里山や農村の風景切り取る

 中国新聞写真クラブ員、金高洋子さん(49)=広島市安佐北区=の写真展「人と自然」が大田市の三瓶自然館サヒメルで開かれている。

 かやぶき屋根の農家とモミジなど、島根、広島両県で里山や農村の風景をとらえた力作16点。以前は野鳥撮影がメーンだったが、八川小(島根県奥出雲町)の校庭の大イチョウに魅せられた2年前から、人とかかわりのある自然を追い続けている。

 雑草を抑えるため、冬に水を張る農法の田んぼにコハクチョウのが集うシーンは、自信作の一つ。金高さんは「手つかずの自然とも違う、人と自然が共生する風景を大事にしていきたい」と話している。展示は7月4日までで、入館料が必要となる。