ヤマイモを栽培する大田原市や那須塩原市の農家のグループ「八溝自然薯会(やみぞじねんじょかい)」が今季の収穫をほぼ終え、2千本近くが採れた。本格的な立ち上げからまもなく1年、今後は販路の確立を目指していく。
会の事務局を務める大田原市桧木沢の果樹園経営鈴木良一さん(62)が6年前、県内で栽培が盛んな矢板市の「高原(たか・はら)自然薯会」が育てたジネンジョを食べたのがきっかけ。「自生と違い、粘り気がなく水っぽいのでは」との思いは外れた。「粘りがすごく強くて、味もしっかりしていた」。同会の知人から種イモを譲り受け、栽培を始めた。
種イモを植え付けるのは毎年6月ごろ。畑に横たえた長さ1・5メートルほどの半円形樹脂パイプの中に入れ、土を固めるようにかぶせていく。山で自生ものを採るには1メートル以上掘らなければならないが、こうすることで、地中に深く伸びるのではなくパイプ内で地面と並行に成長していく。
雑草を抜く程度の手入れだけで、あとは12月から年明けにかけての収穫を待つだけ。長さ1メートル以上、太いところで直径6、7センチまで育つ。
食した人たちはその粘りの強さに驚くという。定番のとろろご飯だけでなく、水っぽさがないので、すりおろしてつみれ状にして鍋に入れてもいいし、磯辺焼きも美味だという。
栽培したいという農家仲間や知り合いが少しずつ増えて昨年2月、二十数人で「八溝自然薯会」を立ち上げた。
毎年仕入れる種イモにもコストがかかる。だが、本格的な商売のための正規の販売ルートは持っていない。
この冬の鈴木さんの畑での収量は約400本。ほとんどを知人や経営する果樹園の客に譲っているが、都内の居酒屋から「ぜひ欲しい」と引き合いがあり取引している。ほかの会員たちも一部を農産物直売所などで販売するが、家族で食べたり、知人に分けたりしている人がほとんどだ。
会員たちの間では、「家族で温泉でもいけるぐらいの稼ぎが出ればなぁ」との声が上がる。副収入の作物としては有望株。今後の販路の拡大、確保が課題だ。(武沢昌英)