7月10日23時9分配信 京都新聞
幕末の「安政の大獄」(1858~59年)を主導した大老井伊直弼(なおすけ)ゆかりの彦根市の井伊家現当主、市長らが8月21日から3日間、大獄で刑死した志士、吉田松陰の墓参などで山口県萩市を訪れる。松陰没後150年の歴史的な和解行脚には、人気キャラクター「ひこにゃん」も同行して墓前で追悼。関係者は「因縁を超えて友好交流を始めるきっかけに」と話している。
訪問するのは、井伊家18代当主で彦根城博物館長の直岳(なおたけ)さん(40)や獅山向洋市長、市が公募で参加を呼びかける市民の使節団約30人。
墓参は8月21日午後2時過ぎからで、地元団体「松陰先生の墓を守る会」などとともに、松陰の生誕地近くにある墓所で哀悼の意を示す。松陰が高杉晋作ら明治維新の志士を育てた松下村塾を訪ね、22日は彦根市と同様に城下町としてまちづくりを進める萩城下町も見学する。
両市は今年1月、「歴史まちづくり法」のまちづくりプランが認定された。認定式で同席した際、彦根市長が萩市長に松陰の墓参を打診「歴史的な事実は踏まえながらも、使節団を温かく迎えたい」と快諾された。
直弼は安政の大獄後、弾圧された水戸藩士らによる「桜田門外の変」(1860年)で暗殺された。彦根市は明治になって100年後の1968年、水戸市と「親善都市」の提携を結んで和解した。
井伊直岳さんは「立場は違えど日本のことを思い行動したのが、松陰であり、直弼だと思う。志半ばで倒れた先人を弔い、今を生きる市民交流の礎になるとうれしい」と話している。