イオン「葬儀ビジネス」に参入 「ブラックボックス」業界大変化

8月24日19時35分配信 J-CASTニュース

 豪華な祭壇、たくさんの生花、おいしい料理と追加していくと、知らず知らずのうちに葬儀が高額になり、後日送られてきた請求書を見て青ざめるというのはよくある話だ。それもこれも料金が不透明なためで、なかでも祭壇は「ブラックボックス」と言われている。ようやく最近、わかりやすい料金体系を売りにしたベンチャー企業もいくつか出現。さらに大手小売のイオンも葬儀ビジネスに参入し、葬儀業界が大きく変わりそうだ。

■3年後に年間葬儀件数の10%を目指す

 イオンは2009年9月から、全国の系列スーパーに葬儀案内パンフレット「安心のお葬式」を配布し、年中無休・24時間対応のコールセンターを設置する。イオンが行うのは受注のみで、特約店契約を結んだ葬儀会社400社に引き継ぐ。

 6つのプランを用意し、基本料金は全国一律29万8000円~148万円に設定した。

 同社広報担当者は事業を始める理由について、

  「故人ともっとも親しかった喪主が一番慌ただしくて、納得した葬儀を行えなかったという不満をよく聞きます。費用についても不透明だという意見が従業員から上がっていて、それなら自分たちで葬儀をやろうということになりました。受注するだけでなく、料金体系の透明化と、葬儀会社の体制もチェックし、お客さまが安心して葬儀を行えるようにしていきます」

と話している。

 当初想定している顧客の対象は、全従業員30万人とその家族、イオンカード会員1700万人とその家族だが、スーパーのサービスカウンターにも冊子を置いて幅広い層を取り込んでいく。「3年後には年間葬儀件数の10%を手がけたい」と意気込んでいる。また、仏壇、仏具、墓石を販売する、はせがわと業務提携することを2009年8月24日に発表した。

 「死体の経済学」(窪田順生著、小学館)によると、葬儀は粗利50%にも達する高収益ビジネスだ。なかでも祭壇は「ブラックボックス」で、30万から100万円とピンキリ。高い料金を支払っても、毎回新調するとは限らず、むしろ使い回しが「常識」だ。葬儀会社が300万円の豪華な祭壇を新調しても、4~5回の葬儀で元がとれる。それ以降はすべて儲けだ。同じものを10年間も使っているというケースもある。祭壇を飾っている生花も次の葬儀に流用する場合もあるそうだ。

 ところが最近は都市部で火葬だけの葬儀が増えていて、使い回しのビジネスは成り立たなくなってきた。さらに追い打ちを掛けているのが、葬儀ベンチャー企業の参入だ。

■葬儀ベンチャー、10年で年商40億円超

 ティア(名古屋市)の冨安徳久代表は葬儀業界の革命児と言われている。18歳の時に葬儀屋でアルバイトから業界に入り込み、1997年7月にティアを設立した。2009年8月現在で名古屋市内中心に22会館、大阪に1会館の葬祭会場を展開している。09年9月期第3四半期(08年10月1日~09年6月30日)の葬祭事業の売上高は46億1000万円だった。

 急成長を遂げた理由は、業界の常識を覆した料金体系にある。葬儀にかかる費用のひとつひとつをオープンにした。

 祭壇料金は大きさ、形式によって異なり、小さいものは20万円台から、豪華なものは100万円台。祭壇料金には、枕飾り一式、火葬場手配、お通夜の道路案内、受付用具一式、祭壇上供え物、位牌、焼香用具一式が含まれている。

 そのほかにかかる料金もすべて明記している。遺体を会場に運ぶ寝台車料金が3万円(同一市群内)、その時に使う布団が1万1000円。会場で遺体の保存に使うドライアイスは1回分で5300円。消臭剤、防腐剤が1万1000円。この時にかかるサービス料金が7万円。湯かんの儀が8万5000円。仏衣一式が5500円。御棺が3万5000円。通夜、告別式、火葬場、初七日法要、初七日会席、後飾り祭壇にかかる一連の費用がわかる。

 生前に本人か家族、親族、知人が1万円を払って会員になると、50万円相当の割引を受けられる。葬儀を1回終えると無効になるが、再度会員になる人が多く、09年6月末現在で累計13万人にのぼる。

 外資系企業も参入している。

 オールネイションズ・ソサエティ(東京都中央区)は03年に日本に進出し、価格の透明性と本人自ら生前に予約するサービスで話題になっている。

 プランは全部で3つ。火葬を中心とした1日のお別れプランが50万円で、火葬の費用、納棺用品一式、枕飾り一式、役所への届け出、ドライアイス、骨容器一式、写真、寝台車、案内スタッフの費用が含まれている。家族、親族で通夜、告別式を行うファミリープランは70万円。火葬プランの内容に加えて、祭壇、司会、僧侶用品一式、設営スタッフの料金が入っている。デラックスプランは100万円で、ファミリープランの内容に加えて、生花祭壇、案内スタッフ、受付用品一式、棺の上に置く花束の費用が入っている。終身会員になると、各プランが10万円割引で受けられる。そのほか、オプションで霊柩車5万円、洋型霊柩車10万円、生花1万5000円~2万円、マイクロバス6万3000円などから必要なものが選べる。

 高齢化で死亡する人は今後30年間、増加するとみられていて、関連ビジネスは成長が期待されている。今後もイオンのような大手を含め、新規参入が相次ぎそうだ。

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