パソコンや携帯電話で利用する出会い系サイトのうち、1200以上のサイトが、業者名や所在地などの表示を義務づけた特定商取引法(表示義務)に違反する疑いがあることが朝日新聞の調べでわかった。出会い系は全部で約2300サイトを確認しており、約半数のサイトに違法の疑いがあることになる。
出会い系サイトは、特定商取引法で「通信販売」に分類され、運営業者には、契約前に(1)業者名(2)所在地(3)代表者(4)電話番号(5)料金体系――の表示が義務づけられている。
朝日新聞記者が、パソコンや携帯電話のインターネット上で出会い系サイトを調べたところ、8月末現在で計2299サイトを確認。実際にアクセスして契約に至る手続きの間に、約半数にあたる計1288サイトで(1)~(5)のいずれかの表示違反が見つかり、一切表示していないサイトも308あった。
違反が最も多かったのは「所在地」で、表示されていなかったり、虚偽の疑いがあったりしたサイトが832あった。「代表者名」にはカタカナや姓のみの表記も。表示全体にモザイクをかけたサイトも見られた。
少なくとも四つの出会い系サイト運営会社が所在地としていた千葉県市原市の場所は、雑草が生い茂る山間部で、トタン屋根の古い小屋があるだけだった。空き缶や雑誌、ネコのふんが散乱する小屋で寝泊まりしていた土木作業員の男性(46)は「電話もパソコンもない。こんなゴミ屋敷が会社じゃないのはひと目で分かるだろう」。サイトに記された電話番号にかけると、「ここはカスタマーセンター。委託なので詳しくは分からない」と返ってきた。
別のサイト運営会社が所在地としていた東京都新宿区のJR四ツ谷駅近くの場所は、幹線道路から一歩奥まった住宅地にある寺と墓地だった。寺の関係者は「出会い系サイトなんて聞いたこともない」と驚く。ほかに「新宿区青葉」という存在しない住所や、踏切わきの工事現場、振り込め詐欺の現金送付先として悪用され警察庁から公表された住所を所在地としている業者もあった。
都内で、客を装った「サクラ」を多数使って複数の出会い系サイトを運営している会社社長は「本当の所在地や電話番号を記せば、苦情が殺到して大変だ。後ろめたい業者はみな同じことを考えるはずだ」と打ち明ける。この会社が運営するサイトは、以前使っていた事務所を所在地として表示しているが、今は無関係な会社が入居し、電話も常時留守電にしているという。
監督官庁の消費者庁取引・物価対策課は「業者名や所在地は契約上極めて重要な情報で、表示されなければ重大な問題だ。表示違反は違法であり、当庁と関係法人でパトロールを続ける」と話す。(宮崎勇作、後藤太輔)