坂戸市塚越地区で、住民が「飯盛川」の荒れた土手に早咲きのサクラを植え、ゼロからの観光地作りを進めてきた。近くに大宮住吉神社があることから、今では「すみよし桜の里」と呼ばれ、「一足早い春を楽しめる」と県内外から観光客が訪れるようになった。市観光協会は、近くのイチゴ農家や日本最大級の台湾式宮殿「聖天宮」と連携した観光ルート作りを進めたい考えだ。
03年、葦(あし)や雑草が生い茂り、防犯や防災、景観の面でも課題のあった荒れた河川沿いを、「人の集まる観光地にしよう」と地元の60歳前後の約30人が「すみよし花卉(かき)愛好会」(矢沢儀一会長)を設立した。
その年の春、1本1万円でサクラのオーナーを募り、若木を約1キロに120本植樹した。サクラは、2月末~3月中旬に咲く大島桜と寒緋桜(かんひざくら)の交配種にした。夏には隣接する休耕田に4000株のショウブも植えた。サクラは4年後に咲くようになった。
花見の季節になると、テントに長テーブルと椅子を置いた休憩所で、炭火の焼き鳥やだんご、うどんなども販売しながら「お客さんにできる限りのおもてなしを」と見物客を迎えている。
「車椅子でも近くで花を見られるように」と、鉄板を並べて遊歩道も整備しており、メンバーが車椅子を押して歩くサービスもしている。
坂戸には観光名所が少なく、観光はよさこい祭りなど「イベント主体」(市観光協会)。そこで観光協会も観光業者らに直接PRするなど「すみよし桜の里」を全面的にバックアップしており、昨春の見物客は2万人を超えた。
愛好会の矢沢会長は「我々がいなくなった後もこの里を守る人を作るのがこれからの課題。10年、20年後でも多くの人が訪れる名所になっていてほしい」と話している。【鷲頭彰子】