猛暑の夏。津市安濃町大塚の公園で7月23日正午ごろ、近くに住む無職倉田一美さん=当時(65)=が熱中症で倒れ、死亡した。ボランティア活動で一人、公園や寺の敷地の手入れをしていた最中の出来事だった。
第一発見者で大塚区自治会長の倉田孝一さん(75)は、公園の水飲み場に顔を突っ伏した状態で倒れている一美さんを見つけた。「暑さで体調が悪くなり、なんとか水飲み場まで行って、そのまま意識を失ったのでは。あの日は特に暑かったから…」。23日は、1年で最も暑いとされる「大暑」で、津でも最高気温37・5度の猛暑日となった。
公園は集落を見下ろす高台にあり、貝の化石も出土する子どもの格好の遊びの場。そばにある寺は、住民が「観音さん」と呼んで親しんでいる。夏場は雑草が生い茂るため、一美さんは「大切な場所だから」と毎日、草刈り機で手入れした。短い草は手で丁寧に抜き取った。孝一さんは「地元の人なら誰でも、一美さんのボランティアを知っていた。本当に感謝していた」。
一美さんは、老人会でグラウンドゴルフをする時は「熱中症になるといけないから」と塩分の入ったあめを配ったり、妻の福子さん(58)に「家の中でも熱中症になることがあるぞ」と注意を促したりするなど、暑さに人一倍気を使っていた。その矢先の悲報。「まさか夫自身が倒れるなんて。周りの人や私ばかり気に掛けて、ばかみたいに責任感が強い人でした…」。福子さんは仏間の遺影を悲しそうに見つめた。 (三重総局・高嶋幸司)