中国 塔が刻む交流史

高さ約6メートル。丸みを帯びた塔の先端部は雑草で覆われ、歳月の長さを感じさせた。少数民族ペー族が多く暮らす中国雲南省大理に、約600年前に他界した4人の日本人仏僧の供養塔「日本四僧塔」がある。日中関係の悪化により多くの民間交流が延期されるなど影響が及ぶ中、今夏に訪れたこの塔を思い出した。

 1380年、明の洪武帝(朱元璋)は重臣が反乱を企てたとして数百人を処刑した。4人の日本人留学僧にも累が及び、大理に流刑された。死後、地元の人々が供養塔を建てた。塔は日中戦争を経ても壊されることはなかった。そのことには深い感慨を覚える。

 塔は今、ドラマ撮影所内にある。かつて畑だったところに撮影所が建設されたが、塔はそのまま残されたためだ。05年には中国映画「単騎、千里を走る。」の撮影で雲南を訪れていた俳優の高倉健さんと中国人の張芸謀監督が塔の話に感動して修繕費を寄付した。

 塔を介して日中仏教界の交流が盛んになり、日本人の見学者も増えたという。ひっそりとたたずむ塔が刻む歴史もまた長い民間交流史の一ページである。【鈴木玲子】

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