9月11日12時1分配信 毎日新聞
◇県北のJAみどりの
県北のJAみどりの有機農業推進協議会が10日開いた「有機稲作現地検討会」で、先進農法の「ふゆみずたんぼ」(冬期湛水(たんすい)水田)に雑草のコナギ(ミズアオイ科)が多く発育し、収量減が心配される状況になっていることが分かった。ふゆみずたんぼ農法は、農薬を使わずとも抑草効果があるとされてきたが、大きな課題が浮上した。
大崎市田尻北端の蕪栗沼南側・伸萠(しんぼう)地区にある須藤啓一さん(45)のふゆみずたんぼ20アールを視察。あぜ沿いばかりでなく田の全域にコナギが繁茂しているのを確認した。養分を奪われた稲は茎丈が低く、まだ十分実っていないのに黄金色に。穂のもみ数は少ないという。見込み収量は昨年より少なく10アール当たり360キロを割り込む可能性がある。
コナギは湿地性の一年草で、多くのこぼれ種で増える。須藤さんは03年からふゆみずたんぼに切り替え、現在、1・9ヘクタールで実施。以前は除草剤を使い、コナギはほとんど発生していなかった。伸萠地区では須藤さんを含め約10戸が約20ヘクタールでふゆみずたんぼを行っているが、コナギの繁殖ぶりはどこも似たり寄ったりという。
ふゆみずたんぼの理論は「無数のイトミミズが活動し、ふんなどの堆積(たいせき)でトロトロ層ができ、雑草の発芽を抑える、さらに米ぬかやくず大豆の散布で、抑草効果をより高める」。だが、田を乾かす時期や日数、有機資材の散布量などによっては、抑草効果が出ないことも多いことが判明しつつある。
蕪栗沼と周辺の水田は、渡り鳥と農業の共生を目指しラムサール条約に湿地登録されている。ふゆみずたんぼは、地元自治体と自然環境保全団体が唱導し、農林水産省が補助金を出すなどして実験栽培も行い、本格実施が始まって3年目。雑草の進入度は高まる傾向だという。須藤さんは「ふゆみずたんぼ米は強い需要がある。技術を確立する過程で試行錯誤は避けられない」と話す。【小原博人】