富山の重文「浮田家」手入れ行き届かず 管理費不足が悩み

富山市太田南町の重要文化財「浮田家」で、池に水を引けずに雑草が生い茂り、破れた障子も直せないなど、手入れが行き届かない状態が続いている。庭木の剪定(せんてい)や茅葺(かやぶ)き屋根の修理などに予算を使い切り、池の整備や障子の補修に手が回らないためだ。浮田家を管理する市生涯学習課も、伝統的な景観を維持できない状態に頭を悩ませている。
 浮田家の管理人の中村利昭さんや関係者によると、庭園の池では現在、水路に泥やおがくずが詰まって水を引くことができず、雑草が生い茂っている。母屋では座敷などの障子十数枚が破れたままになっているほか、経費節減で母屋の一部しか電気をつけないため、室内が薄暗く、来場者が休館日と間違えることもある。

 市生涯学習課によると、手入れが行き届かない理由は管理費不足にある。浮田家の予算は年々減少しており、今年度の管理費は約200万円。それも庭木の剪定や雪囲い、茅葺き屋根の修復などに使われ、池や障子の補修費は残らない。

 また、文化財などの入場料は次年度の管理費に充てられるが、浮田家の入場料は大人100円で、年間入場者は約3000人に過ぎない。

 これに対し、同じく市内の重要文化財「森家」では、ライトレール沿線という地の利もあって年間約5万人が訪れており、岩瀬自治振興協議会への今年度の管理委託料は人件費を含めて約580万円となっている。

 浮田家の来場者の中には、荒れ果てた景観に肩を落とし、「文化財が泣いている」「水のない池が寂しい」などの声も聞かれる。市生涯学習課は「十分な景観整備や活用策を検討したい」としている。

◆浮田家 江戸時代中期の農家の建築様式を残しており、1979(昭和54)年、宅地を含めて母屋、表門、土蔵の3棟が重要文化財に指定された。80~82年に1億3300万円をかけて半解体修理が行われ、一部の間取りを往時の姿に戻した。敷地面積は約5190平方メートル。

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