舳倉島の「西の池」雨水しみ出し形成 北國新聞社調査団が見方強める

北國新聞社の舳倉島・七ツ島自然環境調査団の藤則雄団長(金大・金沢学院大名誉教授)は25日、舳倉島北西岸の「西の池」周辺の地形や地質を調査し、同池が島の段丘に降った雨水のしみ出しで形成されているとの見方を強めた。西の池では豊富な種類の昆虫が確認されており、藤団長は「池の環境を守るには段丘上の植生や土壌などへの幅広い目配りが必要だ」と話している。
 西の池は、島北西岸の中央部にある「龍神池」の西約60メートル、標高約6メートルの地点に位置する。長さ約10メートル、幅約3メートルの小さな池で、水深は10~60センチ程度。

 周辺地形を観察した結果、藤団長は、同池が島の表面を覆う三つの海岸段丘層のうち、2番目に高い、約8万年前に海底に積もった「中位段丘」の斜面の下に位置することを確認。池よりも斜面に近い地点には湿地が広がっていることからも、藤団長は「段丘にしみ込んだ雨水が周縁部で地表にしみ出て、岩盤の上で池を形成したのだろう」と結論づけた。

 同様に、西の池より標高が約1メートル高い龍神池は、9~10万年前に堆積(たいせき)した高さ約10~12メートルの「高位段丘」のへりにあり、同段丘に降り注いだ雨水のしみ出しによって成り立っていることがほぼ確かめられた。

 西の池で水生昆虫の採集を行った昆虫班の富沢章班長(石川県ふれあい昆虫館長)によると、同池は龍神池の約10分の1の広さながら生息する昆虫の個体数が多く、今回の調査では、龍神池では確認されていない「マルミズムシ」も採取できた。

 「水生昆虫の生息を知るには、西の池が舳倉島で一番大事な池」と富沢班長は話しており、夏場、島内の池にヤブ蚊対策で油が散布された際にも、同池を除外対象にするよう要請したという。

 同池の貴重な自然環境を守るに当たって藤団長は、水面の直接的な保護のほかに、池の水の供給源である段丘の環境保全が最も重要だと指摘する。

 藤団長は「小さな島の狭い段丘面に、たとえば雑草駆除の農薬が大量に散布された場合、池の生態系は一気に崩れ去ってしまう可能性が大きい」と話し、環境の変化を映すバロメーターとして池の水質、生息動物の調査を続ける必要性を強調した。

 23日に舳倉島入りした調査団は25日、調査を終えて島を後にした。全6班合同での調査は今回が最後となる。輪島へ向かう船上で藤団長は、昨年5月に初調査を実施して以来の団員の労をねぎらい、年度末の成果まとめに向けて、最後の一踏ん張りを求めた。

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