化学肥料頼らぬ マメ科植物研究

愛知教育大(刈谷市)の菅沼教生(のり・お)教授(52)=植物生理学=を中心とする研究グループによる、マメ科植物の窒素取り込みに関する研究論文が、26日付の英国の世界的な科学誌ネイチャーに掲載される。菅沼教授は「この研究で化学肥料を使わずに作物を大きく育てられるようになり、食糧増産や環境保全に役立つ可能性がある」とみている。教育系大学の同大の教員の研究が同誌に掲載された例は、確認できる過去約20年はないといい、同大関係者を喜ばせている。(岡本真幸)

 ネイチャーに今回掲載された論文のテーマは「根粒菌の共生窒素固定に必須な宿主マメ科植物遺伝子の発見と機能解明」。責任者の菅沼教授ら同大を含む7研究機関の研究者19人が参加する共同研究に基づいて執筆された。
 菅沼教授によると、マメ科植物は、共生するバクテリアの根粒菌を通じて空気中から取り入れる窒素を利用して育つことができる。大豆にもその能力があるが、農産物として十分な大きさに育てるために化学的に合成した窒素肥料を使っているという。
 ただ、化学肥料を作るのに石油エネルギーを用いることがエネルギー消費による地球温暖化、畑にまいた肥料が土に残って川や海に流れることが赤潮などの海洋汚染の原因になっているという。
 そこで、化学肥料を使わずに大きく育てて収量を上げるため、今回の研究では、根粒菌による窒素取り入れのメカニズムを遺伝子レベルで解明することをめざした。マメ科で日本在来種の雑草ミヤコグサを使い、正常な野生種を科学的に処理して作った根粒があるが窒素を取り入れる能力を失った変異体で、共生している根粒菌のどの遺伝子が窒素の取り入れにかかわっているかを調べ、その遺伝子と能力を特定した。
 この研究を発展させることで、将来的にはイネなどの植物にも応用でき、日本の食糧生産にも貢献する可能性があるという。菅沼教授は「窒素取り入れ能力を他の植物に持たせるには、現時点では遺伝子組み換えの方法しかない。今回の研究成果は、他の植物への応用の基礎になる」と話している。

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