ヒラヒラと花びらが舞うサクラの散り方に「異変」が起きている。花の蜜を吸うことを覚えたスズメが、がくごと花を食いちぎっているからだ。ここ数年で急増し、花がボトボトと落ちるようになった。空き地が減り、この季節のえさになる雑草の種などが減ったことが一因とみる専門家もいる。
桜並木で有名な兵庫県宝塚市の「花のみち」。満開のサクラの根元を見ると、丸ごとポトリと落ちた花が、あちらこちらに散らばっている。花の付け根には食いちぎられたような跡がある。見上げると、「チュンチュン」とスズメがさえずりながら、枝から枝へと渡っていく。
「かつては注意してやっと見つかる程度だった現象だが、この数年は、どこでも見られるようになった」と、日本野鳥の会大阪支部長の平軍二(ひら・ぐんじ)さん(72)は話す。
スズメがサクラの蜜を吸う行動は、1980年代半ばに東京の写真家が気づき、野鳥愛好家の間で話題になった。その後、全国各地から報告が相次ぎ、戦前から見られる行動だということが分かった。ただ、発見例は少なく、時々観察される程度だった。
サクラには、メジロやヒヨドリなども集まり、花の中にくちばしを深く入れて蜜を吸う。しかし、くちばしが太く短いスズメは同じように吸えないため、がく側から吸い取ろうと、花ごと食いちぎる。
なぜ、こうした行動が今、増えているのか。
スズメのえさは、雑草の種子や虫などだが、冬を越えたこの季節は種子もあまり残っていない。虫もやっと出始めた時期で、食べられるものが少ない。
都市鳥研究会代表で、スズメの生態に詳しい唐沢孝一さん(66)は「各地で空き地が減って、この時期のえさがさらに減り、サクラの蜜を吸う行動が徐々に広がってきていた。野鳥などに時々見られることだが、こうした知恵のあるスズメが増えて、食べ方が伝わった結果、ここ数年で急激に広がったのではないか」と話している。(小林裕幸)