除草剤耐性を持つよう遺伝子が組み換えられたセイヨウナタネ(GMナタネ)が輸入後、愛知県知多市のふ頭から同県弥富市にかけての国道沿いなどに自生しているのをGMナタネの調査に取り組む市民団体「遺伝子組み換え食品を考える中部の会」が新たに確認した。同会は「移送ルートの一部に落ちたものが育ったのではないか」と指摘している。人工的に遺伝子が組み換えられた外来種のセイヨウナタネの定着は、日本の生態系に影響を与える可能性が指摘されている。【福島祥】
同会が今年4月11日に調査したところ、知多市北浜町のふ頭でGMナタネの自生地を確認した。セイヨウナタネは国道247号を北上、県道や国道23号を経て弥富市三好まで計17カ所に点々と自生。採取して検査した結果、8カ所は除草剤耐性を持つGMナタネであることが分かったという。
日本貿易統計(08年)によると、年間231万トンのナタネが主に油の原料としてカナダなどから輸入されているが、GMナタネの割合は不明だ。農民連食品分析センター(東京都)によると、日本に自生しているGMナタネは、港から製油工場などへの輸送中にトラックからこぼれ落ちるなどして育ったとみられる。
日本に「侵入」したセイヨウナタネの中には、本来一年草のはずが多年草化したり、茎が太くなるなど巨大化したものもある。同じアブラナ属の植物と交雑し奇妙な姿を見せるものもあるという。
同会は昨年10月、津市の国道23号沿いの空き地で、ナタネのような黄色い小さな花に、ブロッコリーのような葉を持つ植物を見つけた。同じ空き地には、カブや小松菜のような葉を持つ個体も発見。近くで見つかったセイヨウナタネを含め、いずれからもGMナタネの遺伝子が確認された。調査に参加した四日市大学の河田昌東(まさはる)非常勤講師(環境科学)は「自生したGMナタネが世代交代して増えた結果、突然変異や交雑など、国がGMナタネを承認した時には想定しなかったことが起きている」と指摘している。
【ことば】遺伝子組み換え(GM)ナタネ
農水省は04年、茨城県・鹿島港周辺でGMナタネが自生していると発表した。その後、名古屋港や四日市港でも自生が確認された。「交雑によって除草剤が効かない雑草が現れたり、食卓の野菜の中に入ってくる可能性もある」との懸念が指摘されている。環境省は「生態系への影響はない」とするが、毎年、主要な輸入港周辺などで分布状況を調べている。