【Re:社会部】名前をつけてください

9月20日8時1分配信 産経新聞

 日本第2の高峰、南アルプスの北岳(山梨県)で6月、小さな赤い花を咲かせる花があります。発見者は甲府市の喫茶店マスターで植物研究家でもある村松正文さん。ユリ科の高山植物「エンレイソウ」と「ミヤマエンレイソウ」の雑種とみられ、数代続き定着したようです。ところが、もう20年も前に見つかったこの花、いまだに名前がありません。

 新種とみられる植物に名前をつけるには、研究者が新種と示す論文を学会で発表。審査で認められればラテン語の学名がつきます。しかし、この花の論文を準備していた大学教授が急逝し、計画は頓挫してしまったのです。それでも村松さんに落胆した様子はありませんでした。

 「植物には雑草一本に至るまで名前がある。名前がない花というのは、実はとても貴重なんです」

 どんな花も、花であることに変わりはない。だから名もなき花もいい。名も実も求めない村松さんらしい考え方でした。

 先日、その村松さんの葬儀に参列しました。65歳の早すぎる死でした。運動不足の身に標高2000メートルは遠すぎて、私はまだこの花を見たことがありません。でもいつか、村松さんに近い場所で、花の名を呼んでみたいと思うのです。

 研究者の方、どうかこの花に名前をつけていただけけませんか?(摩)

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