米作り:無農薬・有機肥料で「本当の米作り」、前橋の石橋さんが挑戦 /群馬

10月4日13時1分配信 毎日新聞

 前橋市苗ケ島町(旧宮城村)でこのほど、ある農家が農薬を使わず有機肥料だけで育てた「ササニシキ」と「コシヒカリ」計2・2トンを収穫した。炎天下で草取りをしたとき、足元にはホウネンエビやタニシ、ゲンゴロウなどが息づき、昔の田ではよく見られた生態系が復活していた。まだ、歩き出したばかりだが「本当の米作りをしたい」と熱意を燃やしている。【塚本英夫】
 「安全・安心でうまい米」に挑んだのは、代々続く養蚕・稲作農家に生まれた「百姓家・石橋」を名乗る石橋勇人さん(46)。農業指導者になるため、農業大学校を卒業したが「農業では食べていけない」「農薬や農協に頼る農業でいいのか」と悩み、村内の「電力中央研究所」で水耕栽培などを学んだが、こちらも納得がいかず、会社勤めなどを続けていた。
 米作りへの思いは断ちがたく、05年、自宅の20アールの田に自ら育てた苗を植えた。鶏糞(けいふん)肥料だけを施し、炎天下に増殖したヒエなどの雑草はすべて手で抜いた。水を張った田には5種類以上の生物が泳ぎ回っていた。父の一夫さん(83)は「昔の田んぼはこうだった。これが本当の田んぼだ」ともらした。
 06、07年と試作を続け、自信を深めた勇人さんは今年、一夫さんの了解を得て80アールにササニシキとコシヒカリを植えた。
 収穫した2・2トンの米は1キロ当たり500円で、友人や知人などの口コミを中心に、飲食店などにも売り込みを始めた。農協に卸すつもりはなく「売れ残れば田んぼに返すだけ」と決意を固めて取り組んでいる。
 売上高はまだ十分ではないが、手塩にかけた米は、香り高くかむほどに甘みがにじみだし、妻の桂子さん(42)は食卓を囲むと必ず「家のお米は本当においしいね」と、エールを送ってくれるという。問い合わせは石橋さん(080・1202・7568)へ。

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