耕作放棄地「牛放牧」田畑に

農家の高齢化などで増加する荒れた耕作放棄地を、田畑としてよみがえらせようと、三原市は2010年度、牛を放牧して生い茂った雑草を取り除く「ウッシー活用モデル事業」を始める。牛の力を借りることで、開墾に必要な労力を減らすことができるほか、牛を提供する畜産農家なども飼料代の節約になるという。モデル地域2か所を選び、3年程度で耕作地の復活を目指す。県東部の自治体では初の試みで、開墾の担い手となる市内の集落法人を4月から公募し、牛の提供についても協力を呼び掛ける。(長野祐気)

 市農林水産課によると、過疎化、高齢化が進む山間部を中心に農業の担い手不足は深刻で、市内の耕作放棄地は718ヘクタール(2005年)に上る。モデル事業では、市内2か所の耕作放棄地に牛を2頭ずつ放つ計画で、牛のフンは肥料になるという。雑草を減らすことで、農産物を荒らすイノシシの隠れ家をなくす効果も見込んでいる。

 牛は、市内の畜産農家や牧場から無料で借りる予定で、畜産農家などは、牛を預けることで、世話の省力化や飼料代の節約になるという。

 市は、牛の運搬費や電気柵の設置費などの事業費145万円を10年度当初予算案に計上した。開墾の担い手は、市内の農家で組織する集落法人21団体などを対象に公募し、5月末までに選定する。集落法人のメンバーが所有する耕作放棄地に放牧する予定だ。

 市農林水産課は、3年間での耕作地の復元を想定しており、「収穫は、早くても4年後になるが、耕作放棄地に悩む農家に一つの道筋を示すことが出来れば」と期待している。

 和牛を飼育している畜産農家の三原市久井町、松尾裕さん(76)は「草ぼうぼうの耕作放棄地が増えると、農村の景観が損なわれ、地域の衰退につながる。牛が地元の活性化につながるなら、ぜひ協力したい」と話している。

 問い合わせは市農林水産課(0848・67・6080)へ。

(2010年3月17日 読売新聞)

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